ーーそれはちょうど、図書館で勉強を始めたころ。




数学のテキストを開いて問題を解こうとしても、なかなか手が動かない。

数学ってなんでこんなにむずかしいの。
数字を見てるだけで、嫌になる。



「そんなにわかんねえの?」

「うん、無理」



目のまえに座る春馬と、こそっと言葉を交わす。
呆れたような顔の春馬を見て、勉強する気がもっとなくなった。



「参考書でも探してくるね」

「サボんのかよ」

「ちがうから!」



そう否定はしたけど、実際は春馬の言うとおりだったりして。

だってもう、やる気ないんだもん。
気分転換にちょっとぶらぶら参考書を探して来よう。



そう思って席を立ち、のんびりと歩きながら中学生の数学の参考書の置いてある場所を探す。