涙で濡れてくしゃくしゃになるくらい、莉子の手紙はなんどもなんども読み返した。
だから内容はもう、覚えてる。
きれいなその字が頭に浮かぶだけで、胸の奥からなにかがこみ上げてくる。
〝私のことは言わないでください。莉子という存在を彼に言わないでください。〟
そんな莉子の言葉。
どんなことを思って、こう書いたの?
どうして、嘘なんて吐いたの?
ちゃんと莉子のことを彼に話していたら、きっとなにか変わっていたかもしれないのに。
彼に自分の素直な気持ちを伝えていれば、なにか変わっていたかもしれないのに……!
莉子のことを思うと、胸が苦しい。
莉子がこの手紙を書いてるときにどんなことを思ったのか想像すると、切なくなって。
「莉子の気持ちはあたしがいちばん知ってる。 それなのに、あたしは三吉くんのことを好きになっちゃった」


