「希子、料理苦手?」
そんな声が耳元で聞こえて、びくっと体が跳ねる。
び、びっくりしたあ……。
うしろを振り返るとすぐそこに、三吉くんが立っていた。
「うん、苦手……」
皮をむきすぎてやせ細ったにんじんを握りしめていた手を緩めて、まな板のうえに置く。
「あれ、でもバレンタインのチョコはすげーうまかったよ」
「え?」
「くれたじゃん。 ガトーショコラ」
あたしが去年のバレンタインに作ったのは、簡単クッキーだったけど。
すごく美味しいガトーショコラを作ったのは、莉子だった。
あたしが料理が苦手なのとは逆に、莉子はすごく料理上手。
なんだろう。
莉子を思い出して、泣きそうになる。
「あ、あれは……お姉ちゃんに手伝ってもらったの」
「え? お姉さんいるんだ」
「……うん」


