《Kiko》




5月。
桜の花びらはもうすでに落ちていて、葉桜に変わっている。



今日は入部届を出す日だったけど、結局あたしはバスケ部のマネをやることはやめたんだ。


これ以上、三吉くんとの距離を縮めたくなくて。
……この距離がいちばんいいんじゃないのかなって、そう思ったから。



「希子、本当に入んねーの?」

「うん」



自分の机の上に置いてある、みんなに配られる入部届をしまうと、まえの席の三吉くんが振り返ってきた。



「そっか……」



そんな、寂しそうな顔しないでよ。
なんだかすごく申し訳なくなっちゃうよ……。



「部活、がんばってね!」

「おう。 ありがとな」