気がつけば、涙が溢れてシーツには涙の跡ができた。


気を紛らわせようと、ベッドから降りて、開けた窓枠に腕を乗せる。



ふわりと吹いた風が、涙とこの気持ちを攫っていってくれる気がして、心地よくなる。



「……あ」



少し身を乗り出すと、すぐ外にある木の枝に手が届いた。


まだ、つぼみはついていないけれど、この木は桜の木って看護師さんが言ってたっけ。



咲くのは見られるのかな……。



桜はすぐに散ってしまうけれど、すごくきれいに舞い散る。

小さいときはよく、舞い散る花びらをどっちが多くとれるかって、希子と遊んでたなあ。



懐かしいことを思い出すと、胸がぎゅうっと締め付けられるように痛んだ。



「……嫌だよ」



そんな小さな声は、風の音にかき消されてしまった。