「希子、どうしたの」

「ねえ、なんで莉子は走ったりしたの? どうして?」



そう言った希子の顔は、いろんな感情が混ざっていて、いまどんな気持ちなのかはわからない。



「ごめん……」

「ごめんじゃわかんないよ! 三吉くんとなにかあったの!?」



その言葉にぎくっとするけれど、平然をよそおいながら、首を横に振る。



「嘘つき!!」



だけど希子にはばれてしまったみたいで、病室に響くくらいの大きな声を出してそう言った。



希子から顔を背けて、視線を窓の外に向ける。
オレンジ色の空はどこか暖かくて、そして彼が頭に浮かぶ。


ズキンズキンって、胸がまた痛んだ。



「……なにも聞かないで」



希子に届くか届かないかわからないくらいの、小さな声。