「春子はすごくいい子だから、これからもっと好きになっちゃうよきっと!」

「俺もそんな気がするんだよね!入学した時からずっと小川のこと気になっててさ…」


照れたような表情をする柳田くんは、頬をポリポリとかいた。



なんかいいな…♪

春子は柳田くんのことどう思ってるのかわからないけど、柳田くんのこと応援したい!





「柳田くん頑張って!私協力するから!」

「本当か!?ありがとう萩原!じゃあ俺…頑張ってみようかな」

「うん!頑張って!」


うまくいったら春子に春が来るかもしれないね…これがキッカケで春子の男キライもなくなって欲しいな。

柳田くんいい人だし顔だってかっこいいし、それに結構秀才で頭いいんだよね…彼氏にするには申し分無い。





「萩原も凌哉とうまくいくといいな!今あいつといい感じなんだろ?」

「な、何で知ってるの!!?」

「凌哉からいつも聞いてるよ。あいつよく萩原の話してくるから」


柳田くんに筒抜けなんて思ってなかった…男子でも友達同士でそういうの話したりするのね。




「あいつが女のこと俺に話してくるなんて…初めてに等しいんだ。俺と凌哉は同じ中学だったんだけど、あの頃のあいつは今と全然違ったから」

「え?尾神くんと柳田くんて同じ中学なの?確か都内の私立に通ってたんだよね?」

「うん。中学の3年間同じクラスだったけど、あいつはすごく目立ってたよ」


やっぱり…ま、あれだけの見た目なら目立つでしょう。今だってそうだし。




「当時はあいつ結構荒れててさ…友達ともつるまないでいつも一人でいたよ。裏では一匹狼って言われてた」

「え…」


いつも一人でいたの?

そんなの想像つかないよ…だって今よくクラスの男子と固まってわいわいやってるのに…

それに一匹狼だったなんて…今あいつのこと私はふざけて「オオカミ」って呼んだりするけど、中学の時には裏で皆が呼んでいたなんて…





「いつも一人でいて他人を近づけるなオーラ出してた。女子からはすごいモテてたけど、寄ってくる子は全員無視してたし…」

「そうなの…」


今は寄ってくる子を無視はしてないよね。手作りお菓子とかもらってるのとかよく見るし…

私のこと好きとか言っといてそういうの受け取ったりするから、ちょっと面白くないんだよね。




「俺は最初あいつのこと怖いと思ってたからずっと避けてたんだ。でも俺…中2の最初くらいにクラスの連中からいじめの標的になっちゃって…」


いじめ…?

そんな…柳田くんが中学でいじめを受けてたなんて…今の柳田くんからは想像つかない…

柳田くんは悲しそうな顔をして私から目をそらす。




「体育館の裏とかに呼び出されて、数人の男子によく暴力振るわれてたよ…1ヶ月くらいそれが続いてもう本気で死にたくなって来た時…凌哉が俺を助けてくれたんだ…」

「尾神くんが…?」

「うん。たまたま通りかかった凌哉が俺がいじめられてる現場を目撃して…いじめてる奴らをその場でぶっ飛ばしてくれた。そいつらボコボコになりながら逃げていってさ…今も鮮明に覚えてるよ」


柳田くんは少し笑顔になると、私を見て優しい表情をしてくれた。




「かっこ悪いんだけどね…俺はその時に凌哉の前で泣いちゃったんだ…でも凌哉は黙ってそばにいてくれた。それで…『俺んちに来いよ』って誘ってくれてお互いのこと色々話したよ。その日から俺達は仲良くなって今に至るって感じかな。俺は凌哉のこと一番信用してる…だから高校も同じところ受験して、ここに入学したんだよね」

「そうだったの…」


2人にはそんな過去があったのか…私の知らない尾神くんと柳田くんを知れたような気がする。




「俺にとって凌哉は友達でありヒーローなんだ。あんな友達は生涯出来ないと思う…だからあいつが萩原のこと話してきた時、心からその想いが萩原に伝わって欲しいって思ったんだ。凌哉には幸せになって欲しいから」

「柳田くん…」


優しい目をしてくれる柳田くん。

自分のいじめられてた過去を私に話してくれた柳田くんを、私はずっと忘れないと思う…