洋平side


俺には姉ちゃんがいる。

お母さんよりも怖いし、うるさいし、怒らせると面倒くさい。


でも…

俺は姉ちゃんが優しくなる瞬間を知っている。






「洋平!部屋を片付けて!!!」


夕飯時。リビングに散らかした俺の荷物を見て、台所で料理を作る姉ちゃんに怒られる俺。

ソファーで漫画を読んでいた俺は、渋々腰を上げて片付けを始めた。



ここで反抗すると面倒くさい事になるから、ここは従った方が身のため…

家に男1人で女が2人といると、女の扱いが段々とわかってくるもんだ。




♪♪♪♪♪~


すると、キッチンの方からスマホの着信音が聴こえて来る。姉ちゃんのスマホみたいだ…




「あ、もしもし?凌哉くんっ!」


一瞬お母さんかと思ったけど、姉ちゃんの電話の出方でわかる…

凌哉兄ちゃんからの電話だ!





「えーなに言ってんの、もうっ…」


何やら凌哉兄ちゃんに怒っているみたいだけど、顔はすっごく嬉しそうは姉ちゃん。さっきまでの怖い顔はどこへ行ったんだろ…




「うん!わかった~じゃあ明日ねっ」


姉ちゃんは電話を切ると、クルッとこっちを振り返りニコッと笑った。




「片付けは後ででいいから、先に後は食べちゃえば?冷めないうちに食べた方がいいでしょ~」

「…う、ん」


急に優しくなる姉ちゃんを見て、俺はひらめいた。








数日後


学校帰りに隆也の家に遊びに行くと、ちょうど凌哉兄ちゃんに会った。





「よう」


凌哉兄ちゃんは俺を見るなり頭を撫で来る。




「凌哉兄ちゃん!」

「あ?」

「お願いがあるんだ!」

「何だ?」


俺は凌哉兄ちゃんに耳打ちをする…









その夜



「洋平!片付けなさいっていつも言ってでしょっ」



♪♪♪♪♪~…



いつものようにリビングを散らかす俺を怒る姉ちゃん。だけど姉ちゃんのスマホが鳴ると、俺は片付ける手を緩めた。





「もしもし?あ、凌哉くん♡」


姉ちゃんの口調が変わる。

そして、電話を切った後の顔つきや口調も変わることを…俺は知っていた。



さっき俺が凌哉兄ちゃんに耳打ちしたこと…






「毎日7時くらいに姉ちゃんに電話してくれ…」








俺は知っている…

姉ちゃんが優しくなる瞬間を…☆