紅い記憶と廻る時




「伊ヶ崎はまだ教科書届いてないんだよな?隣の平(たいら)に見せてもらえ」


なんだか色々気になる事はあったけど、転校初日の授業は普通に始まった。

得意教科の社会だ。頑張ろ。

その前に、先生の言うとおり、教科書見せてもらわないとな。


「……はい、どうぞ。私はもう今日の分予習してあるから、使っていいよ」


スッと教科書を差し出したのは、シンプルなカチューシャが良く似合う女の子。

秀才らしい。全体的に品が良く、頭が良さそうな美少女だ。

あれ?どこかで会った気が……


「初めまして。平 雛梨(たいら ひなり)だよ。よろしくね、伊ヶ崎くん」

「あ、あぁ、よろしく。教科書ありがと」

「ふふ、何かわからない事あったら、言ってね」


平が微笑む。……可愛い。

……初めましてってことは、初対面。

やっぱり気のせい、か。