「……ちゃん、春依ちゃんっ!」
我に返ると、電話は終わっていて、優さんが切羽詰まったような顔して私の両肩に手を置いていた。
「早く、行くよっ……!」
「行くって……」
「病院にっ!」
まだ、軽く放心状態の私の手を引いて、優さんは携帯と財布を無造作にポケットに押し込んで、足早に歩き出す。
家を出て、通りに出てタクシーを捕まえて、中央病院へと向かった。
タクシーの中で、私は通り過ぎていく窓の景色を見つめた。
優さんは、さっきからずっと私の手を握ったまま離さない。
そして私も、優さんの手を離さないように、しっかりと握っていた。
「……本当、なんですか?」
「ん……?」
「お母さんが、事故に、遭ったって……」
「……うん」
「どうして、事故なんかに……」
「乗っていたタクシーが、事故を起こしたんだって。多分、家に向かってる途中だったんだろうね……」
「……そう、ですか」
イマイチ現実味がなくて、これは夢じゃないかと思った。