私は人は好きな方だったように思う

山の中に住んでいるので噂にきく都と言うのも、数えるほどしか見たこともないが、祭や田植の時期になると、ときどき、ふもとの村へ降りていって、祭の賑わいや音楽や、不思議な踊りをみてたのしんだ

踊りをよく見ようとして人の和に近づいていたら手を引かれて無理矢理躍らされたり、田植の人手が足りないと村人がなげいていたので童の姿に化け手伝ったこともある

食べ物もいろいろ有って、露店からはいつもいい匂いがしていた



そういえば人は暮らしを見ているだけでも面白い

村で一番立派な家には頭を坊主にした男たちが住んでおり、その人達は祈ることが仕事なのだという

見ていると一日中座ってぶつぶつ唱えているか瞑想をしているのだが、それがお祈りと聞くまではただ、陰気な集団もいるものだ、と思っていた

田植もしないので食べ物が採れるわけでもなく、毎日の食事は村の人に分けてもらっているらしい



わたしの呼び名はその坊主の一人に聞いたもので、狐は100年生きると野狐、1000年生きると天狐3000年で空狐になると彼は言った

自分の知らぬ間に名前付けられていたとは

よく聞く程に面白いものである



彼らの考えなどは私にはよくわからず、それでいて傍から見ている私には彼らのなすことが粋なことに見えていた

よきかなよきかな

村人や坊主やのほかの人達のそれぞれにあるであろう喜びだとか苦しさだとかを考えているうちに苦いような哀しいような気持ちになって、面白いという言葉にたくさんの意味を込め、そうつぶやいた

面白いことはよきことだ