ビックリして固まっていると姉さんが不思議そうに
「どうしんした?」
と聞いてきた。
それを聞いた龍さんは笑いながら
「こないだ会ったんだよ。俺が来たから驚いてるんだろ」
と言うと姉さんはなるほどと言いながら座った。
そしてあたしも座り三味線を持ち
「今日はわっちが三味線を弾かしてもらいんす」
といい三味線を弾いた。
弾き終わると龍さんは拍手をしてあたしを褒め、姉さんに言った。
「なぁ夕霧。こいつの水揚げ決まってないなら俺がいいんだけど」
水揚げは新造が一人前の遊女になるための始めてのお客様だ。
それを若くて顔もよく、人気者の上客だから願ってもないくらいの申し出だった。