あたしは手紙を投げ捨てるとすぐに走り出した。
姉さんの声が聞こえないくらいに夢中で見世を飛び出した。
(どうしてあたしを売るときに言ってくれなかったの?)
(あたしが手紙を読む頃には母さんは死んでるってどういうこと?)
(どうして、最後の最後に手紙なんか送って来たの?)
いろんな考えを巡らせながらもあたしは走る足を止めない。
そうして大門の目の前まで来たときに吉原の用心棒に見つかった。
「おい!!お前まさか足抜けなんかするつもりじゃねぇだろうなぁ!!」
と怒鳴りながらあたしを捕まえようとする男を上手くかわして大門を出た。
遠くから男が言った。
「嫌でも思い知らされるんだぞ!!お前の帰る場所はもうここしかねぇんだっ!!」
そんな声を聞きながら走り続けた。
母さんっ…!!