あれ……?


ここは……?




俺は何故か学校の廊下に立っていた。



窓の外を見ると雪。




あれ………?


いま春だよな………?





窓にうっすら映っている自分を見る。



そこに映っていた俺は、黒髪、ピアスなし、レンズの厚いメガネ。




俺が嫌いだった俺。


陰鬱で根暗でイジメられ体質で。





………あ、俺、夢見てるのか……


いつの記憶だろう……





ふと前を見ると目に涙をためて何かを探しながら歩いている少年。


この高校から少し離れた中学の制服を着ている。





………あ。




あの時の……




俺がずっと会いたかった人。


話したくて、触れたくて………









俺の初恋の人。










ということは、高校受験の日か……



あの子は受験生だよな…



俺は受験生になんか配るために呼ばれてたんだっけ……





俺はあの日のように声をかける。



「どうかしたの?」



声は震えていないだろうか?

変なことは言っていないだろうか?




「あ……あのっ。トイレ行ってたら迷っちゃって……
はっ、早くしないと受験始まっちゃうっ」



声が震えていたのはその少年の方だった。



今にも泣きそうな声と顔に何故か「かわいい」なんて思ってしまう。




………そろそろ、俺も異常だな。




「少し戻って、渡り廊下を渡ったとこだよ。
向こうの校舎に行けばすぐに分かるから」



身振り手振りとやんわりした声で教えた。



「あっ、ありがとうございますっ!」


盛大に90度以上の角度まで頭を下げたかとおもうと、すぐに走り去っていく少年。



その後ろ姿に


「がんばれーっ!」


と声をかけた。




……あ!


夢だけど、あの時言えなかった言葉も伝えよう。


現実で言えたら良かったんだけどな。



自嘲ぎみに笑って、渡り廊下を渡ろうと角を曲がったその少年に









「好きだーーーっ!」









言い終わるやいなや体に強い衝撃を感じ、それと同時に景色や、俺の声で振り返った少年が消えていった。