ラスト・バレンタイン



胸が、ドキリと高鳴る。


顔に、全身の血が一気に上ったような気がした。



「い、いや・・・・・こちらこそ、わざわざありがとう」



席を立ちながら、無造作に教科書の詰め込まれた鞄を肩に掛ける。


左手に持った紙袋が、ガサッと音を立てた。



「羽月はさ、コースどうするの?」



照れ隠し、なのだろうか。


関係の無い話を振りながら、人の減った廊下を並んで歩く。



「まだ分かんないかな――――佐伯君は?

上のコースに上がるの?」


「俺はこのままだよ」



そんな、他愛も無い話しか、しなかった。