ラスト・バレンタイン



笑う彼女の後ろで、廊下を行き来する生徒の姿が影で見えた。


寒々しい廊下の空気とは違い、教室はまだストーブが点けたまま。


きっと、彼女が消さずにいてくれたのだろう。



「それで、どうしたの?」



もじもじと、恥ずかしそうにする彼女にそっと声を掛けた。


赤いチェックの入った紺色のマフラーを巻いた羽月。


熱いのだろうか。


顔が赤い、特に頬が赤くて林檎みたいだった。



「・・・・・えっと、ね、これ」



白い細い手が突きつけるのは、茶色い紙袋。


そっと受け取り、中を見ると、それは今日にピッタリの物だった。