ラスト・バレンタイン



海外へ、引越しとの事だった。


知っている者はごく僅かで、親しい友人だけにしか話していなかったらしい。


当然、これっぽちも親しくしていなかった俺は、チョコレートを持っているだけで、何も知らなかった。



鞄に入ったままのチョコレートを、呆然と眺める。


最後、だったのか。


あれが、昨日が。


あまりにもあっけなく終わってしまった時間が、妙に名残惜しかった。



「かわい、かったな」



あの時の、屈託無く笑う羽月の顔が頭に染み付いていた。


ゆっくりと鞄から紙袋を取り出し、中身を血の気の無い手の平に並べる。



――――袋に包まれた、丸いトリュフ。