「………っ!」
いきなり現れたハールーンに、少女が驚いて目を見開く。
次いで、怯えたように身を竦ませた。
「あ………」
「大丈夫だ。私は何もしない」
落ち着かせるように、ゆっくりと優しい声音でハールーンは言う。
そっと抱き締めて、トントンと背を叩くと、少女も落ち着いたのか、ゆるゆると体を預けてきた。
「落ち着いたか?」
少女は眠そうに目をトロンとさせながら、こっくりと頷く。
「少しだけ、質問に答へてくれ」
再び、少女はこっくりと頷く。
「名前は?」
「……沙羅」
「サラか。じゃあサラはどこの出身だ?西洋なのか?」
ふるふると沙羅は首を振る。
沙羅の出身はこの世界のどこでもない。
まず、世界が違うのだ。
だから沙羅は、眠くてぼんやりとする頭で必死に考えた。
何と答えたら、1番しっくりくるのか。
西洋ではない。
ならば。
「東洋……」
そこまでが沙羅の限界だった。
眠気に負けてゆっくりと瞼が落ちていく。
沈んでいく意識をギリギリで踏み止めて、お礼を言った。
助けてくれて。
「……ありが、とう」
すっと沙羅の体から力が抜ける。
ぐらりと傾く体を、ハールーンが受け止めベッドに寝かす。


