マルヤはハールーンから視線を移し、ジッと少女を見つめた。
「ふむ。このお嬢さんもハールーン様が来ると呼吸が落ち着きますな」
確かに、ハールーンが来る前に比べ、少女の呼吸はかなり穏やかになっていた。
「ハールーン様を薬にするとは。なかなか贅沢はお嬢さんですな」
「………薬」
何か複雑だ。
「まぁ、ハールーン様。そう気難しい顔をなさいますな。ハールーン様は十分、お嬢さんのためにできていますよ」
幼い頃からハールーンを見てきたマルヤは、サハル同様彼の考えていることなどお見通し。
一方のハールーンは更に顔をしかめた。
それを見てマルヤは相好を崩す。
マルヤにとってハールーンは、皇太子である前に息子のように感じているよかもしれない。
「………ん」
それまでとは違う、少女の小さな呻き声がした。
ふるふると睫毛が震える。
次いで、ゆっくりと瞼が上がった。
深い青の瞳が、宝石のようにキラリと光った。
2人が見つめる中で、少女はゆっくりと起き上がろうとした。
しかし、体に力が入らないのか、ふにゃっとベットに逆戻りした。
再び起き上がろうとする。
今度は倒れる前に、ハールーンが支えに入った。


