タッタッタッタ
さっきとは逆で
静寂に満ちている廊下。
きっと、
唯斗が伝えてくれたのだろう。
あいつは
行動力があるというか…
早いからな。
後少しで10分待たせていることに
なってしまう。
少し待たせ過ぎたか…?
小さい頃に、
レディーは待たせてはいけない。
と教えられてきたからな。
早足で行こう。
ガチャ
部屋に入り、
一人ボーっとしている彼女を見る。
『皆には、僕が個人的にキミと話したいからって事にしといた。』
少し嘘をついた。
こう思っているのは事実だがな。
きっと彼女のことだ。
皆に迷惑や心配をかけさせてしまった
と、自分を責めてしまう。
美雪「あ、はい」
突然僕の声が聞こえたからか、
驚いている様子。
そして
お茶の1つも出してなかった僕が
急に恥ずかしくなり
急いで用意する。
すると
美雪「あの…理人様?
何かお手伝 / 『理人』…え?」
『キミには…理人と呼ばれたい』
僕は彼女の言葉を遮って言う。
何故か彼女に様をつけて
呼ばれるのが嫌だった。
美雪「…理人…さん?」
次は「さん」を付けてくる。
それも嫌だった。
『美雪さん…
いや、美雪、
それは先程と殆ど変わらないのでは?』
見本として僕は
彼女の下の名前を呼び捨てにする。
でもやっぱり
いきなりの呼び捨ては少し照れくさくて
照れ隠しも込めて
紅茶を差し出しながらそう言った。
確かに、さま と さん は
一文字違いだけど…
「さま」や「さん」と付けられると
距離を感じて嫌なんだ。
美雪「うぅ…り、」
『り?』
美雪「り、理人の意地悪っ!」
やっと呼んでくれた!
『よくできました』
嬉しくて、
微笑みながら彼女の頭を撫でた。

