博仁は眠るさゆりを前に手をあわせて神に祈った。


(神様・・・僕にもおじいさんと同じ力があるのだとしたら、死体を手にお願いすれば願いをかなえてくれますか?

さゆりを人間にしてください。

そして、僕の妻になってもらいます。

エゴだとはわかっています。

彼女が生きていれば、僕はきっと見送った・・・。

見送ってここで今みたいに泣いていたかもしれないです。


けど・・・彼女はもう・・・魔女の死体になってしまったんです。
もし、彼女に僕の願いがきいてもらえたら、僕は彼女と生きていきたい。


お願いします。お願いします。・・・さゆりを僕の妻にしたいです。

僕は彼女を愛しています。
料理は作ってくれなくてもいい、何にもできなくてもいい。

僕の妻になって生きてほしい・・・。お願い、きいてください。

ききとどけてください!)



何分手をあわせて祈ったかわからないが、博仁はお腹の減り具合でふと、正気にもどったとき、目の前に小さな少女がいた。


「やっと私が見えた?」


「君は?」


「私は神のおつかいです。
この札を口に当てて、唱えてください。」


「なんて唱えるんだい?」


「さゆりは私の大切なひと。
私はカエル。カエルは今、さゆりを呼ぶ。

さゆりは私を認めよ。・・・ここまでよ。」


「わかった。やってみるよ。」


「私は見届けてからいくね。」


「うん・・・札を口に当てて・・・。」


「さゆりは私の大切なひと。
私はカエル。カエルは今、さゆりを呼ぶ。」



博仁は少女に言われたとおりに札を口に当てて、唱えてみた。


ボワ~~~~ン!!!


「うわあっ!!」


「きゃあ!!!どこ触ってるのよ!」


「えっ?さ、さゆりさん?
僕の腕の中に、は、は、裸のさゆりさんが・・・。」


「博仁さん?あたし・・・。」


「おっと・・・これを着なさい。
あれ・・・さゆりさんはいくつなんだろう?」


「このさゆりは23才のさゆりだよ。
神様がそのくらいがいいだろうってお決めなさったの。
じゃあ、あとはお願いね。ばいばい。」


「あっ、ちょ、ちょっと・・・。」



博仁は人間になったさゆりの顔をじっと見つめた。

確かに見た目はやってきたときと差はさほどないが、顔つきが幼くてかわいい気がする。


「や、やめてよ。そんなに見つめないで。」


「嫌だよ。僕は君が見たい、君がほしい。
君を束縛する。君を妻にするんだから。」


「あ・・・私は・・・もう人間なのね。
私、おばあちゃんと同じように・・・人間になったんだ。

神様に人間になって博仁さんと結ばれたいかと質問されたわ。
私は・・・はいって答えたの。」


「そっか。」