翌日、博仁は休暇をとって、さゆりの買い物に付き合っていた。

「すごい数だねぇ・・・化粧品だけでもたくさん買ったし、服もすごい・・・。
だけど、やっぱり魔女はすごいもんだね。

一瞬で持ち物が消えちゃうんだから。」


「うん、転送サービスでね。便利でしょ。」


「それって人間界以外でも使えるの?」


「え~と、転送サービスは魔界の入り口にあると思ってくれればいいわ。
いろんな世界へ出かけたときに、お土産とかを魔界に持ち込むための窓口なの。

だから魔界へ持ち込んではいけないものがきたら、当然いれてくれないのよ。
まぁ、そんなのはみんなわかっていることだけどね。

あ~、捜査スタッフの持ち物とか武器の場合は別の転送サービスがあるのよ。
専用窓口がね。」


「ああ、杖とかだね。
すごくコンパクトになってたのにはびっくりしたよ。」


「でしょ。魔法を使えば小さく簡単にできるのよ。
それは武器でもお土産品でも同じね。」


そんなたわいもない会話をしながらデパートから出て、お昼を食べようとしていたときだった。


シュッ!!


「うっ・・・この・・・こいつは・・・。」


博仁がさゆりの声に振り返ると、思わず声を荒げていた。

「誰か!彼女を助けてくれぇ!!!ウソだろ・・・。」


博仁の目の前はさゆりの血だまりになっていた。

さゆりは鋭利な刃物、いや、工業用機械のカッターのようなもので腹を切断されたように斬られており、骨で切断をくいとまったという感じだった。

「さゆりさん!さゆり、さゆりさん・・・なんで・・・。」


さゆりは眼をあけられないまま小さな声で一言つぶやいた。


「私が死んだら結界がなくなって帰宅するわ。
私をハウスにいれたらハウスごと燃やして・・・。」


「さゆりさん!だめだ。どうすれば・・・どうすれば君を助けられる・・・?
君は死んではいけない!
嫌だ。嫌だよ・・・。」


まもなく、博仁の耳元には捜査部担当者から連絡があった。

「切り裂き魔の共犯者を確保した。
さゆりが命がけで我々を呼んでくれた。

さゆりを手厚く葬ってもらえると助かる。」


「なぜだ?どうしてそんなに事務的にものが言えるんだ!」


そう言うと、結界はなくなり、博仁は自宅にもどっていた。
博仁の服にはさゆりの血がついている。

さっきまで腕に抱いていたさゆりはハウスのベッドの上で安らかに眠っていた。



「嫌だ、さゆりさんは・・・さゆりは僕の妻になってもらう!」