博仁の帰宅によって魔界から集まっていた捜査担当の者たちは、パッとどこかへ消えていった。


「ほとんどは戻っていったわ。
使い魔による模倣犯もなくなると思う。」


「あのさ・・・さゆりさんはもうこの世界には用事はないの?」


「うん。おばあ様のこともわかったし、この世界へはもう来ないわ。」


「力がなくなっていくのに魔界でどうするの?」


「隠れるしかないわね。
守ってもらっても意味がないしね。」


「どうして意味がないんだ?
君にいてほしいと思う人だっているだろう?
あんなに捜査部だってやってくるくらいだし。」


「それは、私が優秀な魔女だからよ。
でも、これからは・・・老いるだけ。」


「だから、敵がいないここにいればいいじゃないか!」


「無理よ。敵はやってくるわ。
それに、キスしたらカエルにしてくれる女なんて誰も相手にしてくれないでしょ。
たとえ無事でいたとしても、私は博仁さんがただ老いていく姿はみたくないしね。」


「僕はカエルになっても君が好きだよ。
うそじゃないからな。」


「ありがとう。でも私は嫌なの。
そうねぇ、いつか逢えたなら同じ種族で逢えるといいわね。

だけど・・・博仁さんは優しすぎるのが嫌ね。」


「どうして?!」


「私はもっと私を束縛してくれるような男性が好きなの。」


「それは僕はできないな。
僕は自分のために、これをしなさいは言いたくない。

あ、もちろんおいしいご飯を作ってくれるのは大歓迎だよ。
だけど、それだって君が自分から僕に作ってあげようと思ってくれてるなら・・・なんだ。

僕はさゆりさんが何もできない人でもかまわないと思ってる。
家事とかはさ、いっしょに覚えればいいじゃない!って考える方だから・・・。」



「ほんと、優しいんだ。
だからおばあ様も人間になったんだって思うわ。

ねえ、明日の夜、帰る前までいろいろ買い物したいからつきあってよ。
友達にもお土産買って帰りたいの。」


「うん。いいよ。
あの・・・帰る前に記憶を消されたりはしない?」


「ぷっ!あははは。
消すことも可能だけど、博仁さんは消されたいの?」


「いや、僕は君のことをおぼえていたいよ。
たとえ、もう2度と会えなくなったとしても、君との思い出は大切だからね。」


「うれしいこといってくれるんだ。
じゃ、消さないわ。
お互いいい思い出にしましょう。」


2人はその日すぐにお互いのベッドで早く就寝した。