さゆりはブレスレットに向かってしゃべり始めた。

どうやら、魔界への通信機といった代物らしい。


「そう、使い魔を操る犯罪者よ。
えっ、そうだったの?
まだ、人間界で好き勝手してるわ。
とにかく電車の中に出没して、人を傷つけてまわってるの。

私ひとりでは捜しきれないわ。
とにかく、捜索隊を派遣して。
お願いね。じゃ・・・」


「魔界でもお尋ね者のようだね。」


「ええ、そうみたい。
ごめんなさい・・・私がこっちにきたときに、ゲートに飛び込んできたらしいの。
私の責任だわ。
何としても、捕まえなくては!

博仁さんはとにかくお客様の安全を、確保して。
でも・・・自分で対処しないで。
私か捜索隊の誰かを呼ぶようにして。」


「わかった。魔法を扱えなきゃ、どうすることもできない相手だっていうことだね。
あんな金縛りされたら、どうしようもなかった・・・。」


「あの・・・ね。
犯人は必ず私たち魔界のメンバーで捕らえるようにします。
それと・・・あなたは私がきちんと守りますから、安心してね。」


「ってことは、明日には帰らないってことかい?」


「まぁ、そうなるわね。
明日じゅうに捕まったら、明日帰るけどね。」


「そっか。じゃあ、僕が仕事してる間もきちんと守ってくれよな。」


「まかせて!」


「なんか、ちょっとカッコ悪いけどね。
いい年の男が、見た目かわいい女の子に守ってもらうなんてね。」


「気にしないで。
でも、早く捕まえないと、人間にはどうすることもできないだろうし、被害を拡大させるわけにはいかないわ。」




そんなことから切り裂き魔を追って、魔界からきた捜索隊は犯人を捜しまわった。

博仁が電車に乗り込み、いつものように仕事をしていると、切り付けられたと2~3人の男が最後尾の車両まで走ってきた。

博仁とさゆりはすぐにかけつけたが、武道の心得のある客がある男を投げ飛ばして確保していた。



「あ、あれ?」


「違うわ・・・。彼は人間ね。
きっと模倣犯ってやつ?」


「なるほど・・・あ、すみません、ご協力感謝いたします。
お客様はお怪我などございませんか?
事情など少し説明もいただきたいのでご同行願います。」


「あ、いいですよ。」


結局、人間の切り裂き魔は取り押さえられて、警察に連れていかれたのだった。


「なんてことだ・・・模倣犯だなんてさ・・・。」


「ほんとに、こんな被害が拡大していくなんて・・・。
それに、捜索隊の話じゃ、肝心の犯人は逃げ足が早くて見つからないらしいの。
厄介だわ。

これが鉄道以外のところで事件が起こったら、ますます厄介だわ。」



「手がかりとか手配書みたいなのはないのかい?」


「これよ。名前はローレン・フライ。
名前はいかにも金髪のお兄さんっぽい感じだけど、黒髪の日本人っぽいヤツなの。」


「な、なんだその表現は?
魔界っていろんな人種がまじってるのかい?」


「ええ。電車の中をうろついていれば日本人とさほど違いはないと思うわ。
ただ、魔界の住人だってわかる方法は・・・」