勤務中は何事もなく、スケジュールどおりの電車に乗りあと6駅で車掌としての仕事は一段落・・・。

ふと、さゆりが明日にはもういなくなるという現実を考えてしまう。


「いや、これは仕方のないことなんだ。
人間30男と魔女6万女はつながりがある方がどうかしているもんな。

うん、今夜は明るく見送れるように、彼女が1日でも元気でいられるように盛り上げてやらなきゃな。」


そして、次の駅に到着して、電車の発車と次の駅のアナウンスをした直後だった。


電車が不必要なブレーキがかかったため、博仁は運転席へと連絡しようとすると、運転手から博仁に連絡が入った。


「この電車の車内に切り裂き魔がいる!
お客さんが走ってきて教えてくれたんだ。
丘を越えたところで電車を停めるから、逃げられるお客さんを誘導するんだ!」


「でも、追って来たら?」


「警察に連絡した。
停まったら包囲してくれるはずだ。」


「わかった。
がんばって丘を何とか通過してくれ!」



運転手と連絡をとってすぐ、次の瞬間博仁はキュッと唇をかみしめ、一番後ろの客車へと飛び込み、年配の女性のスーツを切った男にケリをいれた。

「やめろ、きさまぁ!!」


顔から黒づくめで隠した男は黙ったままナイフを博仁へと向ける。


「くっ・・・」


博仁の顔が恐怖でこわばっていた。

(うそだろ・・・体が・・・動かない。
何で・・・?何が起きたんだ?
スーツのおばさんは隣の車両へ逃げられたみたいだが・・・僕は、なぜこの場から動けないんだ!)


金縛りにあったように博仁は車両の真ん中のドア付近で座り込んだまま、動けずにいた。


(だめだ・・・これじゃ殺される。
さゆりさん、2人で送別会できないみたいだ。
僕はこのまま・・・ひとりで・・・ごめん。)


すると、次の瞬間、黒ずくめの男は叫び声をあげてひっくり返っていた。


「くそっ。」


「あなたの雇い主は誰なの?」



「えっ?さ、さゆりさん?どうして?」


「さぁ、早く言いなさい!
人間を傷つけたら罪は重いのよ!



「ふん、俺は使い魔だからな。
呪い付きなんか消してやるのは簡単なのさ。
ふふふ。」


「うるさい!えぃ!!」


さゆりは黒ずくめの男を魔法で出した網をかぶせてとらえたが、男はさつまいもになっていた。


「えっ?さつまいも・・・?」


「魔界の住人が人間界で暴れてるわ。
こいつはさつまいもから作られた使い魔なの。

動かしている魔界の住人がどこかにいるはずよ。
私、そいつをやっつけるまでこの世界にいます。

じゃないと、博仁さんが殺されちゃう。
私が絶対に守ってあげるからね。」


「えっ・・・僕を守るって・・・。
さゆりさん、君は・・・君も危ないのに。
もどらなきゃいけないのに。」


「私がもどって博仁さんが家族の系図から消えてしまうなんて、あってはならないわ。
おばあちゃんが泣くわ。

私が何とかするから。
博仁さんは無事にお客さまを誘導して。ねっ。」