突然のかわいい女の子の登場と、驚きの発言、そして何よりまるで彼女は未来に希望をいっぱい持っている少女のように目をきらきら輝かせていた。



「えっ?・・・ちょっと・・・君も酔っぱらってるの?」



「ううん。今日、私の住まいを拾ってくれたでしょ。」



「住まい?知らないよ、僕はそんなの拾わない。」



「黒にオレンジ色のラインの箱よ。
あなたは手に取って気持ち悪い・・・って言ってたわ。」


「黒にオレンジ?・・・まさか、あの趣味の悪い箱の持ち主かい?」



「だから住まいだって言ってるじゃないの。」



「何を世迷言を!君ねぇ・・・そうやってインネンつけてくるのはよくない酒だぞ。」



「もうわかんない人だなぁ!えいっ!」



ボワッ~~~~~!



「えっ?あれ?ここ僕の家じゃないか。どうして?」


「魔法よ。私の魔法。
私、今日からここにお世話になります。
花篭さゆりと申します。よろしくね。」



「お世話になるって・・・ここに住むつもりなのか?
ここはワンルームだぞ。2人なんて住めるわけがな・・・い。えっ!?」



「ほら、こうすれば大邸宅を満喫できます。
いい感じのお部屋でしょ。
私たち、ちっちゃくなったのよ。」



「うそ!・・・うそだろ。僕の部屋が・・・すごく広い。
大きい。大広間みたいだ・・・。
いや、巨人の家か?

小人になってしまったなんて・・・。
で、さゆりさん?
君は日本の魔女なのかい?」



「はい、おじいちゃんがアメリカ生まれでオレンジ好きだったから住まいはハデなんですけど、私は日本生まれの日本育ちの魔女なんでぇ~す。
よろしくお願いいたします。ご主人さま・・・。えへ。」



「ご主人って・・・嘘だろ。おい・・・。」


とまぁ・・・そういう出会いをしてしまったのだった。

おっと、僕の名前をまだ紹介してなかったね。

僕は鷹津博仁。

30才のちょっとさえない車掌である。

ちょっとさえないっていうのは、学生のときからかなり近視がきつくて眼鏡がなくてはならないものになっている。

それでも鉄道好きな僕は鉄道関係の本やネットの情報も見たくて受験勉強よりも熱心すぎて、運転士にはなれないという現実をつきつけられた。



「博仁!というわけでこれからよろしくねぇ~♪じゃ、そろそろおやすみなさぁ~い。」


「うん、おやすみ・・・。って、おい、ここは僕の家だぞ。
ずっと住むつもりなのか?
おい、君は!!だめだぁ・・・寝てしまった。」


彼女は優れた魔女なのだろう。

自分は箱の家に入ったままで、僕は自分の寝床へと放り出されてしまっていた。


「住まいのことはこれから話していけばいいか・・・。」