3月25日。


春休み中のサッカー部の練習は、午後1時から4時まで。


練習中、


「渡辺、ちょっと手伝ってくれ」


氷川先生が職員室の窓から手招きをした。



「手伝いって、なんですか?」


有希が職員室に入ると、担任の新村先生が待っていた。


「午前中、お母さんから電話があった。
 ということで、離任式の日、みんなに転校のこと話すからな」


あまりにも急な転校を強いられる有希の心情を察した新村先生は、事務的に、そして必要最低限のことしか言わないように気を遣っていた。


「おまえはどうせ、色んな物、ロッカーに置きっ放しにしてるんだろ?
 今日から少しずつ持って帰れよ」


そして、これこそが、必要最低限の最重要事項だった。