「夏休み、テツが渡辺に水かけただろ。
 あの時、渡辺の隣りにはヒロがいたんだ。
 ヒロは全然濡れてなくて、渡辺のことだけピンポイントでよく狙えたなって感心したんだから間違いない」

「ふん、そんで?」

「ヒロと渡辺って仲いーじゃん?」

「まあ、男同士の友情だけどな」

「とにかくだな、2人の仲がいいから嫉妬して水かけたんじゃないかってこと」

「……なるほど」


俊介は腕を組み、なにやら考え込んでいたが、


「よし!
 こうなったらみんなでテツの恋を応援しよう」

「は? なんでそうなるんだよ」

「だって、テツ――だぞ。
 自分でなんとかできると思うか?」

「……思わない」

「だから、オレたちの応援が必要なんだ」

「要するに、おもしろがってるワケね」

「んぶぶっ、実は、そう。
 だってこんなおもしろいことないじゃん。
 テツが渡辺を好きなんて――んぶぶぶっ」


笑いをこらえる俊介に、


「応援するのはいいけど、さり気なくね。
 オレたちがテツの気持ちを知ってることは気づかれないようにしないと。
 ヘソ曲げて、よけいややこしくなるかもしれないから」


裕之は釘を刺した。


「了解~――みんなにも言っとくから」




こうして。


本人には内緒で、哲也の恋の応援団が勝手に結団されたのだった。