「ユウって、お汁粉キライなんだ?」


有希の前の手つかずの椀に気づくと、真由は何気なく有希を見た。


食い意地の張った有希が目の前の食べ物に見向きもしないのは、それがキライなものだからとしか考えられない。


しかし、その質問に答えることもなく、


「……私、やっぱり神社に行くのやめる」


有希が暗い表情でボソボソと呟くと、さすがに様子がおかしいことに気づいて、


「東と、なんかあったの?」


真由は、ミカンを取ろうとしていた手を止めた。


「私、6月に転校するんだ……」

「えー?!」

「ウソでしょ」

「静岡――前住んでたところに戻るの」

「静岡……」

「……遠いね」

「だから、神社でお願いしてもムダだと思う。
 もし――もし、私とアイツが両想いになったとしても。
 電車で4時間以上かかるんだよ。
 ……つき合えるわけ……ない……から」


目を伏せる、有希。


そんな有希にかける言葉を見つけられず、2人はしばらく黙っていた。