「まだ、この前のこと気にしてるの~?」


口の悪さを改めようとした途端、哲也の口数は激減し、有希も異変に気づいた。


「アンタが静かだとブキミなんだけど」


有希が哲也を挑発したが、


「いや、でも、さすがにあれはね――」

「氷川Tにも、相当説教されたんだろ?」


そばにいた雅也(まさや)と圭太(けいた)が助け舟を出した。


「それよりおまえ、水かけられてよく平気だったな」


雅也は、一応女子の有希を気遣ったが、


「ん、まあ、暑かったしね」

「いや、そういう問題じゃねえだろ」

「は? まあ、とにかく。
 私はこの前のことはなんとも思ってないし、アンタも気にしなくていいからね」


有希は哲也の背中をポン、と叩いてカッコ良く去って行った。


「アイツって、マジ、男前だよな」

「オレ、アイツに女らしさを感じたこと、一回もないんですけど」


雅也たちの発言も仕方がない。



「あっつ~」


スポーツタオルでガシガシと汗を拭き、腰に手を当てて水筒をグビグビと口飲みした後、


「ふう~っ」


手の甲で口を拭う様は。




オレ、なんであんなヤツ好きになっちゃったんだろーー。



恋心を抱く哲也にさえ、そう思わせてしまうほどの男っぷりだったからだ。