その瞬間、パラメータボックスがけたたましいアラームを鳴らした。バトルモードが発動する。
「ジョチさん、ダメ!」
 アタシたちはバトルフィールドに降り立った。小さなジョチさんが不気味な笑顔をアタシたちに向けた。
「殺されに来たの? アンタたち、邪魔なんだけど。オレ、ジョチを殺すように命じられててさ。引っ込んでてくれる?」
 かわいい顔のはずなのにソイツの笑みはどす黒い。アタシはゾッとした。ソイツはいきなり、アタシに矢を放った。
「危ないっ……!」
 オゴデイくんがアタシの前に飛び出した。手にした弓で矢を打ち払う。
「助かったよ!」
「アナタに傷付いてほしくない」
「はい?」
「いえ、何でもありません」
 ニコルさんが呪文を唱え始めてる。コンボ用のスキルは、安定のBPM240。アタシが詠唱に入った瞬間、ニコルさんの魔法が完成した。杖の先端の珠がまばゆい緑色に輝く。
「正体を見せてもらおうか!」
 ニコルさんが杖を振るった。光と風が、小さなジョチさんのふりをしたソイツに襲いかかる。
 “翠光明真”
 幻覚系の効果を全部リセットする魔法だ。ソイツがかぶった仮面が、フィールドの背景もろとも吹っ飛んだ。
 シャリンさんが毒舌を放った。
「またランプの魔人なの? ワンパターンなステージね」
 巨大でムキムキな魔人はニヤリと笑った。
「前のシャイターンと一緒にしないでくれる? オレの名はイフリート。煙の立たない炎から生まれた魔人。シャイターンなんかより、はるかに高等な存在だ。むろん、オマエたちよりもね」
「しゃべり方、ムカつくわ」
「同感ですっ!」
 ニコルさんがシャリンさんの剣に魔法をかける。シャリンさんの剣が緑色に発光した。
「ルラ、援護して!」
「はい!」
 ちょうど魔法が完成したもんね。デカいヤツには、これがいちばん。
 “ピコピコはんまーっ!”
 イフリートにヒット判定。と同時に、シャリンさんが飛び出す。その速さも目で追えるようになってきた。
「うわ、シャリンさん危ない!」
 イフリート目がけて突っ込むシャリンさんを、真横から、ギラッと光る剣が襲う。反り返った刃がシャリンさんに迫る。
 キィン、と甲高い音。
 ギリギリのところで体勢を切り替えたシャリンさんが、カウンターで攻撃を防いだ。剣と剣がぶつかって火花が散る。
 シャリンさんを襲った相手に、アタシは頭が真っ白になる。
「ジョチさん、どうして!?」