斎「あぁ。痛みは引いている。」


私をチラッと見たあとそう言った。


その日はそのまま斎藤さんは部屋で休んだ。


船は途中で止まることはなかった。


きちんと港まで戻り宿で休憩をとった。


斎藤さんは私のことを一切他言しなかった。


私達はゆっくりと大坂をあとにした。


屯所へ戻ると眠気が襲ってきた。


ついフラフラになると、誰かに抱きとめられ、そのまま意識を失った。


一瞬、「ありがとう。」と聞こえた気がした。


これは果たしていいことなのか。


本来なら斎藤さんはそのまま治療のために別の宿へ行って、そこで大坂の力士と乱闘をするはずだった。


私が斎藤さんを治したために治療をする必要もなくなったのだ。


これは吉と出るか凶と出るか。


私は結果を待つしかないんだ。


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