「ごめん……日曜行けなくなった」

『また、あのワガママ従妹の仕業?』

「うん……せっかく誘ってくれたのに、本当にごめん」


本当なら盛大に愚痴りたいけど、家の電話だから誰が聞いてるかわからなくて我慢した。

リカはスマホ3台持ちだけど、あたしはガラケーすら持ってない。基本料金が勿体ないからだけど。


芹菜はスピーカー越しにため息をついて、あたしを諭すように話してきた。


『ねえ、和。マジな話、うちの養子になりなよ。母さんも父さんも、和ならいつでも娘にして良いって言ってくれてるんだし。うちも和が家族になってくれたら嬉しいし』

「……ん」


芹菜とその家族の思いやりが嬉しかった。いつも芹菜の家族には助けてもらってる。暖かな家族……うちとは大違いだ。どれだけ助けられ救われてきたか。
養子という申し出はおばさんが亡くなった直後からあった。かなり心が揺れたのは確か。


あの家族の一員になれたなら、どれだけ幸せだろう。今よりずっと女子高生らしい生活を送れるに違いない。


けど、だからこそ。


これ以上は迷惑をかけちゃいけない……そう思ったんだ。


「ううん、いい。ありがとう、芹菜」


あたしは心の中にある決意を悟らせないようにしつつ、唯一無二の親友に心の底からお礼を言った。


「芹菜、本当にありがとう。芹菜が友達でよかった。たくさんありがとう」

『な、何さ急に? 何かあったの!?』

親友の訝しげな声に、小さく笑って「何でもない」と答えた。


「じゃあ、またね」


そう言って、受話器を置き電話を切った。


「……心配しないでね、大丈夫だから」


自分に言い聞かせるように、小さく小さく呟いた。