《我が永久に眠る刻、それは人が争わぬ世界へとなることだ》
【龍】が、わたしへと語りかける。
数千年の時を刻んだその存在は、繰り返されるヒトの愚かさをつぶさに見てきた。
《我は、神ではない。だが、造られし創造者(マスター)の刻み込んだ命令(プログラム)……我の原始的な衝動は、全てヒトがヒトであるかによるもの》
【龍】の抱える虚無感とともに、その記憶がわたしへ染み込んでくる。
【龍】を造り上げた人は……
もともとは、争いを憎んでいた。
彼女は、全てを戦争で無くした。最愛の夫も、子どもも、両親や親類縁者、友達、知人、住む家も、職場も、財産も。記憶や自身の身体能力に声までもが奪われた。
――敵側に使用されたとある兵器により、半径数百kmが一瞬で焼きつくされたのだ。それこそ塵一つ残らぬほどに。
女性はたまたま用事があり地下深くを訪れていたから、一人だけ無事でいた。けれども、だからといって無事ではなく身体のあちこちを失った。
まだ生まれたばかりの我が子も、他に何もしていない罪なき何千万人もの人びとが一瞬で命を奪われたのだ。
どうして――?
なぜ、人は簡単に他の命を簡単に奪えるの?
そこに生きていたことが罪なの?
ただその国に生まれて生きていただけで、命を奪われなければならないほど罪深いことなの?
なぜ……?
私たちは、あなたたちに何をした? 私たちは何をしなくても滅ぼすべき敵なのか。ただ生きていただけで憎まれ、敵とならねばならなかったのか。



