夜遅く帰ったリカを部屋で問い詰めれば、5000円を盗ったことをあっさり認めた。


「仕方ないじゃん! デートとホテル代なかったしぃ~それにさ、あんたなんてカレシも友達もなくて、どうせ使い道がないじゃん。ならアタシが使った方が超有効に使えんじゃね?」

「勝手なことを言わないでよ! 日曜にあるコンサート用の服を買うためのお金だったんだから、今すぐ返してよ」


さすがにあたしは心底腹が立ってた。ムカつくとか言うレベルじゃない。許されるならリカに往復ビンタ百回したいくらいだ。


腰に手を当てて睨み付けたあたしに対し、ネイルケアをしながら横目でチラッと見ただけのリカはフンと鼻を鳴らす。


「コンサート? あんたによさがわかんの? ってか、あたしが代わりに行くわ。かわりにあんた、補習出な。3つ受けるから超ダルくて、コンサートの方が100億倍マシじゃん」


そういえば、リカは期末でほぼ全教科赤点取ってたんだった。勉強せずサボっては遊んでばかりだから、当然と言えば当然だけど。


「なんであたしが補習を受けなきゃいけないの! 元はと言えば勉強しないあんたが悪いんでしょ。それに、他人に頼ってばっかだと自分のためにならない」

「う・ざ~ッ」


リカはネイルの手入れをやめて、紙切れを手にしてヒラヒラ振る。


それは、あたしが楽しみにしてたコンサートのチケットだった。


「ちょ……何を勝手に! 返してよ!!」

「ふふん、ただの居候のクセに。アンタの物や自由なんて何一つないんだよ。養ってもらってる恩を仇で返すわけぇ?」

「……」

「あ、そうだ。オヤジが日曜は取引先を家に連れてくるから、接待しろってさ。あんたもそれくらいにしか役に立たないんだから、ちゃんとしなよね」


勝ち誇った顔をしたリカを蹴飛ばしたくなったけど、何とか我慢した。