「きゃああ!」
枝に捕まろうと伸ばした手は虚しく宙を切り、体はそのまま2m下に落ちていく。
ダメだ、と思った瞬間――
ドサリ、とぶつかったものは思ったより柔らかかった。
「……まったく……無茶をされますね、あなたは」
困ったような笑顔が間近に見えて、へ? とキョトンとしたけど。
自分がセリスさんの体に馬乗りになってると気づいて、飛び上がりそうになりながら慌てて離れた。
(や……やだ! なにしてるのあたしは)
頬から頭が熱くなって、心臓がうるさいくらいドキドキしてる。
なんで、だろう。
セリスさんの新緑のような瞳を間近に見た瞬間、すごく鼓動が速くなったけど。何だか……安心できた。
「そこまで無茶をなさらなくても。一晩くらい何も食べなくても大丈夫ですよ」
「そ、そんなことありませんよ。腹が減っては戦ができぬ、日本の格言です。食べられるうちに食べておかなきゃ、いつ何が起きるかわかりませんからね」
さ、戻ってください! とあたしはセリスさんの背中を押して洞の中へ戻らせた。
あたしの濾した水とサルナシの実で簡単な食事を済ませた後、セリスさんがあたしについて興味深そうに訊いてきた。
「あなたはずいぶん行動力と知識があるんですね」
「そうかな? こんなの誰でもできると思いますよ」
「そうでしょうか? いざとなったらここまでなさる方は少ない……と思います」
ふっ、とセリスさんが淡く微笑む。どうしてか、キュッと胸がしめつけられた。
「……あなたに、興味がわきました。いろいろと教えてください」



