「えっと……」
あたしはなんて言ったら良いかわからない。
こんな綺麗な外国の方は見たことないし、まして知り合いだなんてあり得なかった。
「あの……どこかで会ったことがありましたっけ?」
正直に、思ったことを口にした。面識が無いのだから、下手に誤魔化したところですぐにぼろが出るだけだし。
「……どうでしょうか?」
セリスさんは眉尻を下げて、困ったように笑う。額に手をやると、目を閉じて深く息を吐いた。
「やはり、駄目みたいです」
目を開いたセリスさんが項垂れたから、彼の銀髪がサラリと肩から落ちる。
「駄目って……」
「名前だけは憶えていました。ですが……他のこと、自分がどこの誰なのか。どこで何をしていたのか……どんな人間だったのか。一切憶えていません」
「えっ」
明らかに落ち込んだ様子のセリスさんを見ていると、何だか気の毒になってきた。
これは、いわゆる記憶喪失というもの?
マンガとかのフィクションではよくあるけど、現実(リアル)で初めて見た。
もしかするとこの山か森で事故に遭ったとかで、遭難した上に記憶を失ったのかな?
なら、日本にいるのに日本を知らないのも納得。日本語をこれだけ不自由なく喋れるなら、少なくとも相当勉強したか日本に滞在してるってことだよね。



