現れたのは、とてつもなく巨大なライオンのような、豹のような。猫科の動物に似てる。
だけど、大きさがありえない。
いくら百獣の王であっても、体の大きさがバスより大きいってのはないよね。
少なく見積もっても10メートル以上の体を持つその生き物は、銀色のなめらかな毛が全身を覆い、鋭い爪と牙を持つ。
牙……犬歯は口からはみ出していて、1mほどの長さがありそう。水色の瞳と長い尾を持ち、背中には水色に輝く粒子状の翼が備わっていた。 ついでに尾の先も同じように輝いてる。
《生者が、永霊界へ何用ですか?》
それは口を開かずとも、頭に直接声が響く。そういえば、ヒスイと同じ感じだと気付いた。
《白夜、貴様なら聞いておろう。我らに説明させるか?》
《大神よりお話はありました。ですが、魂呼びはそうそう赦すわけにはまいりません》
白夜と呼ばれた不思議な生き物は、あたしをヒタと見据える。
《和、とおっしゃる。巫女であるあなたのみ立ち入ることを赦しましょう。現世の穢れを持ち込まぬため、一時的に記憶を封じます》
「え、ちょっと待って」
あたしは白夜に向かって抗議した。
「記憶を封じるって……それじゃあ目的も忘れちゃうじゃない。それでどうやって探せばいいの?」
《本来ならば死者は来世へ未練を残さぬため、永霊界へ足を踏み入れた時点で全ての記憶を消し去ります。今回は大神の後押しがありましたゆえに、特別に赦しますが。命を奪わぬ代わりに記憶を一時的に消す。その条件に従っていただけないならば、お帰りくださって結構です》



