深く息を吸い込んでから、勢いよく顔を上げて彼の瞳を見据えた。
(頑張れ、あたし。ちゃんと伝えたいことは言わなきゃ)
「あの……バルド、あの時は……嫌なことをさせてごめんなさい。あたし……自棄になってて、死にたいって願ってた。
今はそんなふうに考えてないから……」
「…………」
あたしがしどろもどろに話していても、バルドは変わらずジッとこちらを見てる。恥ずかしくて俯きたくなる気持ちをこらえながら、何とか勇気を振り絞って彼から目を逸らさずに話した。
「で……その。あの……あたしを斬った時、手加減してくれたでしょう? 斬られた当人が言うのも変だけど……ありがとう。お陰で助かったよ」
ただ単に“斬られた”事実のみを見れば、アタマオカシイんじゃね? って言われてもおかしくないレベルの言葉だと思う。
死にそうな目に遭わせた相手にお礼なんて変だし、頭のネジ緩んでる? って白い目で見られるのも。
でも、たぶん。そんな表面上の断片的な情報だけで、彼の行動を判断したり非難することは浅慮だとしか言えない。
バルドがどれだけの深謀遠慮を張り巡らせているか。凡庸な考え方しかできないあたしはわからないけど。
やっぱり、何をされたって……ただ1つだけ思う。
“あたしはバルドを信じよう”……って。
好きな人だからという理由の身びいきを抜きにしても、彼は信頼するに値する人だから。



