バルドは無事だった迎賓館の執務室にいるらしく、侍従長のヒルトさんが玄関で出迎え入れてくれた。
しばらく歩くとミス·フレイルが控えていて、彼女に連れられてもともと用意された部屋へ戻る。
『お湯は用意してございますから、まずはお身体を暖めましょう』
半月ぶりというのに、ミス·フレイルは相変わらずストラトス語しか喋ってくれない。その頑固さに苦笑いしながらも、なんだか懐かしく感じた。
「あの……でも。わたし……勝手にこちらへ寄ってしまっただけなのであまり長居は……」
あたしがそう口にした途端、ミス·フレイルはピタリと足を止める。そしてこちらへ向き直ると、ノンフレームのメガネを指で軽く持ち上げ、ギラリと光らせた。
『何をおっしゃっておられるか、わかりかねます。あなた様はバルド殿下のご婚約者であり、お帰りになられるのはディアン帝国縁(ゆかり)の場所のみ。この度はお戻りになられ幸いでございますが、他国の招待へ応ずる場合は必ず事前にご相談ください。理由なき滞在はあまり感心いたしません』
「は……はぁ」
堅苦しいミス·フレイルは全くぶれない。生真面目が服を着たような彼女は、ほんの軽い冗談すら応じてくれないんだよね。
彼女に連れられて部屋に戻った途端、服を剥ぎ取られて悲鳴を上げたけど。そのままバスルームに放り込まれ、熱いくらいのお湯を体にかけられると。自分がどれだけ冷えていたかがわかる。
あたたかいお湯はじんわりと心身を暖めていってくれた。



