控えめなノックの音が聞こえてきたので、はっと我に返って急いでペンダントを服の下に隠した。石と会話なんてどう考えても電波飛ばしてると思われかねない。
いや……こっちで電波って概念があるかは知らないけど。
「は、はい?」
微妙に語尾が上ずって変な返事になったけど、相手は気にせずにドア越しに声を掛けてきた。
「夜分に申し訳ありません。少しだけお時間をいただけますか?」
セリス皇子の声だった。何だろう? 時計がないから正確な時間はわかんないけど、今はたぶんもう眠る時間帯だ。そんな夜更けに何の用事があるのかな?
帝都へ向かう旅程なんかの打ち合わせはすっかり終わってたし、セリス皇子と会う必要性はあまりないと思える。
(でも……)
今は、なんとなくひとりが寂しい。
自分がどうなるかわからない不安感と心細さは、胸に染み着いて広がっていくばかり。誰かにそばにいて欲しい……なんてわがままも、今なら言える。
生まれてこの方、本当の意味でひとりきりなんてなかった。あんな義家族でも、少なくとも血縁はあったし同じ家に住んでた。今のあたしには身寄りも保護者もいない。
先への恐怖で押し潰されそうな心を、誰かのそばにいることで慰めたかった。



