「セリス、やっぱり来やがったな」
「ええ、予想よりは早かったですが」
呆然とした耳に、セリス王子とハルトの落ち着いた声が届く。パニックに落ちてるのはあたしだけ? と思うくらい、他の人たちに動揺は見られなかった。
「な、何でそんなに落ち着いていられるの。 お城も街も燃えてるんでしょう? みんなを助けにいかなくていいの!?」
「あらかじめ翡翠様とレヤーさんが報せていてくださいましたから、事前に対策はしてありました。宮殿も街も既に避難は済ませてますし、一見派手に燃やされているように見えても、消火すれば元に戻る術をかけてありますから」
シレッとセリス王子がそう答えるから、あたしは安心してまたその場に座り込んだ。
「よ……よかった。セリナやユズや……バルドも……みんな無事なんだね」
ホッとして胸に手を当てていると、セリス王子とハルトが何かを相談してる。
「ナゴム、ここは危険だから離れた方がいい」
訓練と警護の為に着いてきてたロゼッタさんが、警戒を露にしながら炎上する宮を眺める。
「すごく、嫌な予感がする……誰だっ!?」
ロゼッタさんは手にしていた両手用の斧を構え、鋭い声で誰何(すいか)する。夜の闇の中に、キラリと光る何かが見えてきて。ロゼッタさんはあたしを庇い抱き抱えてその場から跳んだ。
「うわぁああっ!?」
勢いよく突進してきたものは、レヤーに激突してようやく止まったけど。
それは、人工移動機のエークに乗ったカイル王子だった。
「奴ら……予想以上に強力な【闇】の術を発動しやがった! 街も宮殿も、闇の炎に包まれて……避難途中の人たちが襲われてる。宮殿の人間も衛兵や騎士に襲撃されて怪我人が出た!」



