しんみりした中で、ただあたしが涙を流すすすり泣きの声だけが響く。
遠雷が、再び耳に届く。
「あ……雨……降るから……帰ります」
「は? 雨?」
あ~だの、う~だの唸ってたハルトが、すっとんきょうな声を上げた。
「雨なんか、降るはずないだろ? 空は雲ひとつない満月だぞ」
「でも……遠雷が」
あたしがそうこぼした瞬間、レヤーが小さな息をこぼした。
「遠雷……ですか? 翡翠さん、もしかすると」
《うむ。そなたも感じておったか……嫌な感じがする。とてもとても嫌な“もの”が、近づいておる》
ヒスイが浮かんだまま空へ目を向ける。まるで睨み付けるような鋭い視線は、彼女には珍しい。いつも飄々として人を食ったような態度なのに、その顔から初めて余裕が消えていた。
《わらわも、見くびられたものじゃ。このような程度の術で誤魔化しが効くと思うてか》
ヒスイがスッ、と手を掲げる。彼女がそのまま手をゆっくりと下ろした瞬間、パリンと澄んだ音が響く。
そして、見えてきた光景に目を疑った。
それは――
セイレム王国の首都と水晶宮殿が炎上している、という現実が露わになったからだった。



