「歴史書?」
「我が国は300年ほどの歴史がありますが、その間の公的な記録は公正に残してあります。ディアン帝国が国としての承認を得るため、我が国へ使者を遣わした時に当時の国王陛下が謁見した記録があり、その時使者の中に“アキト”という名前がありました」
「……!」
「歴史書によれば、彼は……アキトは。ディアン帝国の成立に尽力し、周辺国に認めさせるための交渉を行なった……とあります。
そして、ディアン帝国の発展のために科学技術を活かしていたのだと」
セリス王子は一度口をつぐみ、ハルトを見遣る。視線を受けたハルトは、小さく頭を掻いて呻いた。
「……アキトは……初代皇帝の婿になった」
「え?」
「初代皇帝は女だったんだ。アキトと同い年で……ずっと彼を頼りにして。彼を望んだ……アキトはあることを条件に、彼女の婿になった」
はぁ、とハルトは忌々しげにチクショウと呟く。
「初代皇帝は髪の色が赤かった。だが、アキトは黒髪で……皇帝は、最愛の人の色が決して失われないように。直系の皇族は髪が黒になるよう強い術をその血にかけたんだ」
「それだから、あなたは赤い髪……」
「ああ。赤い髪は初代皇帝以来らしいがな。それよか、俺が生まれた時。100近い皇宮の長老に、アキトの生まれ変わりと涙を流されたらしいな。そんなに似てるのか?」
「……似てる、よ」
次々と明かされる真実に、あたしの頭が麻痺したように動かない。 何も考えられなくて、ただハルトに無意識に呟く。
「似てる……本当に、似てる。秋人おじさん……に……」
ぶわっ、と視界が白く滲んでいく。
ハルトの名前の意味が、やっとわかった。
“秋”に対する“春”。秋人でなくて、春人。そう、彼は名付けられたんだ。
その、アキトそっくりだと涙を流した長老によって。



