「ユズさんはティオンバルト殿下と言霊の守護があり、尚且つセイレスティア王国の“歴”が、日本にある太陽暦とほぼ同じだからでしょう。
それに……和さん。あなたはこちらの世界で命を授かっている上に、水瀬の血筋という力もあったから、馴染むのも速かったのです」
「…………」
あたしは体から力が抜けて、ヘナヘナとその場に座り込んだ。
「わたくしの母上……セリナが日本へ帰れなかった最大の理由がそれです。母上は父上による治癒魔法で命を救われましたが、それはこの世界の時間軸を元にしたものだからです。
魔法によってこの世界の時間軸基準に組み換えられた肉体では、あちらの時間軸には耐えきれません。魔法が無効となり、戻った瞬間に命を失うのです」
「……時間軸の……せいで? なら、あたしはあなたに足の怪我を治療してもらったよ」
庭園であったことを揶揄すれば、セリス王子は苦笑いを口元だけに貼り付けた。
「……あれくらいでしたら大した影響はありませんでしたから。それより、あなたをこちらへ留めたい、という意図があったからです」
冷静に見えたほの灯りの緑色の光は、どことなく熱情を孕みだしたように見えた。
「わたくしは、あなたをこちらへ留めたい。そして、わたくしが何からもあなたをお守りしたい。神に誓って、嘘偽りない想いです」
「……」
あの時と同じ、揺らめく炎より熱く燃え盛るものを含んだ視線に晒されて。あたしは何も言えずに俯いた。



