「それよか、よくわからねえのがセリスだ」
ハルトはますます苦々しげに口元を歪ませ、しかめっ面になって吐き捨てるように言う。
「なんで、あのいけすかねえ女にベッタリなんだ? しかも、何が何でもあの女を最優先にしろ……って。会談にまで同伴させた時、マジであたまイカれたんじゃねぇ?って思ったわ」
セリス王子の話を聞いて、少しだけ胸が痛む。あの時の予感はやっぱり正しかった。
あたしを好きだ、そばにいたいと告白してくれたセリス王子。その時の真摯な瞳は疑わない。
だけど……。
やっぱり、もっと魅力的な女性がいれば。よい薫りを放つ色彩の美しい大輪の花があれば、道端の小さな花に目を留める人なんていない。
ううん、あたしはまだ花すら咲いてない。蕾すらない。誰にも踏みしだかれる野草。だから、より美しい魅力がある花へ蝶が舞うのは当たり前だし、ごく自然なこと。
昔から連綿と続く優秀な子孫を残すための、人間の根源に関わる本能的な選択なんだから。みんながアイカさんに惹かれるのは仕方ない。
セリス王子だって、やっと目が醒めただけ。だから、あたしは恨んだりはしない。胸が痛んだり傷ついたとしても、あたしが分不相応な浅ましい期待をしただけだから。
……もしかしたら、本当にあたしを好きでいてくれるかもしれない……って。
家族と少ない友達以外に好かれたことがないあたしが、そんな期待を持つこと自体がいけないんだ。
他人、ましてや異性に好きになってもらえるなんて。どんな奇跡が起こってもあり得ないのに。
あたしは独りで、生きる。それがお似合いだし、きっと避けられない運命なんだから。
だから、期待をしちゃいけなかったのに。なんてばかだったんだろう。
バルドだって……
愛しそうに彼女を見る彼の瞳を思い出す。あたしには、決して向けられない優しく穏やかな……。
最初から、決まってたしわかってたはずなのに。なんでこんなに胸が痛いんだろう?



