「ミコ、オデン」
部族長の言葉は意味がわからない。いや……ミコは巫女で、オデンは食べ物のおでんのことなんだろうけど。
「どうやら“あなたはあたたかい人ですね”と言ってるみたいです」
レヤーの通訳で何とか意味が解るけど、オデンが“あたたかい”って意味は何かビミョー……いや、寒い冬に汁が染みたほかほかのおでんは体が暖まって最高ですがね。
「変な風に日本語が使われてるよね。というか、何であなた達はそんなに日本語がペラペラなの? もしかして日本人じゃないの?」
あたしが疑惑の目を向ければ、静かに食事をいただいてたセリス皇子は食器を置いてこちらを見る。
「たしかに、疑問に思われるのも当然でしょうね。しかしながら、今はまだお教えすることが出来ません」
「……教える気がない、と?」
「いえ、今はまだその時ではない、としか申し上げられません。時が満ちれば必ずお話しいたしますので、申し訳ありませんが今しばらくお待ちください」
セリス皇子の蒼い瞳には真摯な光しかなくて、嘘や偽りを口にしているようには見えない。サラリと揺れる銀糸のような髪も、眉も一片の乱れもないように感じられた。
たぶん、彼は優しげでなよやかな外見に似合わず、意思がかなり強そうだ。自動車がある訳じゃない世界で、自ら志願して1000kmもの道のりを移動した強者。あたしがどんなに頼んだって、きっと教えてもらえない。



