願い……? 願いって。
「何かがうまくいきますように、と思うこととか?」
《それじゃ。祈りに近いが似て非なるもの。結果を期待するならば、誰もが一度はそう思うじゃろ? じゃが、この地の人間は……それすらしない。祈り、どころか願いすら奪われておる》
ヒスイの言うことはややこしくて頭がこんがらがるけど、ロゼッタさんがわかりやすく説明をしてくれた。
「なら、狩りで大きな獲物が取れるといいな、とか思うこともないってこと?」
《それじゃ。結果を期待するならば、自然と思うことすらない。不自然過ぎるじゃろ?》
「たしかに……なんだか、おかしいね」
やっと意味がわかって、あたしは頷いた。
「ライムおばあちゃんから聞いた。あたしのお母さんはこの村で巫女をしてたって……ヒスイは知っていたの?」
《まあな》
ヒスイは悪びれた様子もなく、ケロリと答えた。
「知っていたのなら、なんで教えてくれなかったの? それ次第であたしだって……」
《知って、どうした? いたずらに混乱するだけじゃったろう。わらわは知るべき時に伝えるだけじゃ、すべてにはふさわしい時というものがある》
ヒスイはスッと立ち上がると、冷然とあたしを見下ろす。やっぱり、姿は人に近くても似て非なるものだって、ひしひしと感じた。



