「だいぶ、うまく乾燥してるね」
「うん」
乗馬の訓練前の空いた時間を使い、ロゼッタさんと一緒に部屋で押し花の出来を確かめる。
妹さんの墓前に花を供えたい、と願ったロゼッタさん。彼女の希望を押し花って方法で叶えてあげようと、以前滞在した屋敷で摘んだ花をせっせと押し花にしてきた。
ドライフラワーって方法もあるけど、それだと色が落ちるしボロボロになりやすい上に虫がつきやすい。押し花ならある程度なら色もついたままだし、運ぶ時荷物にならない。
日本じゃ四六時中いろんな花が咲いてるし売ってるから有り難みがないけど。めったに花を見られない地方の人なら、手土産としても喜ぶんじゃないかなって思う。
「なごむ、ありがとう。きっと妹もみんなも喜ぶよ」
「ううん、あたしはただ思いついただけだし。ロゼッタさんの気持ちの方がきっと嬉しいと思うよ」
押し花を眺めながら、そういえば帝国ではこんなものがないんだなって思う。こんな単純なものを思いつく人がいなかったのかな?
そろそろ乗馬訓練という時間になって、ミス・フレイルが渋面を作りこちらへ告げてきた内容は。
『バルド皇子殿下のご下命です。動きやすい格好で、車どまりまで来なさい……とのことです』
『え? それってどういう……』
『とある村へ、お忍びで視察なさるそうです。さ、お待たせする訳にはまいりませんから、急ぎお支度を』
細かな説明も何もなく、問答無用で着替えさせられたのは。
あたしが男装してた時の服装だった。



