「こら!待て、こそ泥!!」
サフィが通りに並ぶ店をなんとなく眺めていると、街にそんな声が響き渡った。
「今日こそ捕まえてやる!!」
怒鳴り声の方へ顔を向けると、大柄の男が棒を持って小さい子どもを追いかけていた。
「まぁ!」
サフィはその様子を瞳に映すと、いてもたってもいられなくなり、追いかけっこをしながらぐるぐると通りをかける二人に駆け寄った。
「待ってちょうだい!」
そうしてちょうど壁に追い詰められた子どもの前に両手を広げて立ち塞がった。
「なんだよ、ねーちゃん。」
男は地を這うような低い声でそう言うと、鋭い瞳でサフィを睨んだ。
「あの…この子が何をしたというの?」
サフィがやっとのことで絞り出した声は微かに震えていた。
「その坊主はな、俺の店の商品を何度も何度も盗むんだよ。今日こそは絶対とっ捕まえてやる!」
男は殺気だった瞳をサフィの後ろにいる男の子に向けた。